今月の一枚　　(2010.12.20)　　　　戻る　　　次へ　　　 過去のページ一覧へ

　 数え歳で１００歳になる母が亡くなって一ヶ月が過ぎた。　天寿を全うしたとはいえ来

年迎えるはずだった誕生日を子供たちみんなで祝ってやれなかったことには悔いが残

る。

　母を最後まで看取ってくれた妹の話では県から１００歳を祝う記念品をもらったときに

はとても嬉しそうにしていたそうだ。

　母は 明治４４年６月の生まれだから、明治、大正、昭和、平成と四つの時代を生き抜

いたことになるが 特に終戦後の物不足の中で食べ盛 りの 私たちを育ててくれた苦労

を考えるともっと大事にしてやればよかったと思うことしきりだ。

　母 との思い出のひとつに古い柱時計のことがある。　 この時計は今も我が家でほぼ

正確に時を知らせてくれているが、文字盤の裏には 「明治４０年１２月２６日修理」と毛

筆で書いた文字が読み取れるから母が生まれる 前から時を刻んできたことになる。

　昭和40年から５０年前半だったと思うが、久しぶりに帰った実家で「ボーン、ボーン、ボ

ーン」と鳴るこの時計の音に 無性に懐かしさを覚えた。その後、実家へ帰るたびに母に

せがんだが 養女として育ててくれた祖母が中古で買って大切に使っていた時計で 「子

供の頃からこの音を聞いてきたから」と良い返事をもらえなかった。

　ある日、日付と曜日の表示される 新品の柱時計を購入して 母に見せたところ意外に

も「これはいい」といって��交渉成立�≠ﾆなった。それから、この古時計はずっと我が家

の居間に鎮座している。

　いたずらが 絶えない私を庭の木に縛り付けたほど厳しい一 面もあった母だったがい

ま時計の音を聞きながら母とのことが昨日のように思い出される。

　さて、今月の一枚は、名古屋で初氷が観測された朝撮影した作品。 空気は冷たいも

ののそれほど寒さを感 じない 川べりで、風に吹き飛ばされまいと 地面に落ちた 枯れ

枝にしっかり巻きつくようにしがみついている落ち葉が目に留まった。　薄っすらとつい

た霜が本格的な冬の到来を告げていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
名古屋市天白区天白川大橋上流　　　２０１０年（H22)１２月１０日撮影　

キャノンEOS５ＤＭａｒｋ�U　　２８〜３００ミリ　Ｆ１０　オート−１補正　　　ＩＳＯ４００　　ＷＢ太陽光