今月の一枚　　(2010.3.20)　　　戻る　　　次へ　　　 過去のページ一覧へ

　
　３月上旬はよく雨が降った。菜種梅雨を思わす天候にうんざりしていたが、この日

は風は冷たいものの雲の合間から薄日の差す天気になった。その風に吹かれて散る梅

の花を見ながら日進市野方町辺りを歩いた。

　野方橋を少し上流に行くと小さな竹薮があって、そこには奥へ通じる細い小径があ

る。私は以前からこの辺りが何となく好きで、たまにこの小径に入って行く。背の高

い竹に覆われていて昼間でも少しだけ薄暗く、車が行き来している道路からわずかに

歩いただけで��奥深い森にいるような気分にさせてくれる�≠ｻんなところに惹かれる

のかも知れない。小径はわずか数十メートル歩いただけで「ぱっと」明るくひらけて

畑に突き当ってしまう。

　積もった笹の落ち葉に足を踏み入れると、長雨のせいでたっぷり含まれていた水が

靴の周りにじわーっとにじみ出てくる。突然「ギー、ギー」と竹どうしのこすれる音

が響いて笹が揺れた。小鳥たちが騒ぐ。やはり森の奥深くにやってきたような感じが

してくる。

　中程まで行って振り返ると、小径の先に差し込む柔らかな陽ざしに向かって芽を出

たばかりの雑草が伸びている。その光景は、春を待ちきれずに暖かな陽ざしを求めて

進む雑草たちの行列のように見えた。不思議なもので何となく春の気配のする陽ざし

がそこにあるだけで、こんなふうに感じてシャッターを切ってしまう。写真を撮る楽

しさとはきっとこんな瞬間のことを言うのかも知れない。

　小径を抜けて見上げると、無数に浮かんだ白い雲の向こうには青空が広がっていた

久しぶりに見る青空だ。この日、夕方のニュースで高知市で桜が咲いたといっていた

昨年より６日（平年より１３日）も早く歴代１位タイだそうだ。この地方でも１８日

には開花した。いよいよ春本番だ。

日進市野方町　　２０１０年　３月　１０日 撮影

キャノンEOS５ＤＭａｒｋ�U　　　１７〜４０ミリ　Ｆ１１　オート　−0.５補正　　ＩＳＯ６４０　　ＷＢ太陽光