 (2020.2.20) 戻る 次へ 過去のページ一覧へ 
今月の一枚は、朝の陽ざしが護岸のコンクリートと水面に影を作っているだけの どこに でもある光景。 このとき 不意に子供のころ亡き兄と近所の川に釣りに出かけたときのことが蘇った。場 所や状況は違うが、青空が広がっているものの冷たく強い風が吹いていて雲が太陽をさ えぎると首をすくめて思わず「寒い」と声が出てしまいそうな雰囲気が 遠い記憶と重なっ たと思う。 暫くして、ネットで フランスの小説家プルーストの「失われた時を求めて」という長編小 説の解説文を見つけた。それによると突然向こうからやってくる記憶のことを「無意志的 記憶」というそうで「プルースト効果」と呼ぶ人もいるらしい。それとは少し違って、覚えて いても曖昧だが想いを巡らすことではっきりしてくる記憶を「意志的記憶」という。 私は、 兄とは 何度も釣りに行った記憶はあるものの、どんなことがあったかまではすっかり忘れ ていた。天白川の川辺に立って、震える手に息を吐きかけながら鮒を釣り上げた日のこ とが不意に蘇った。これは「プルースト効果」というのか。 |
